池江泰郎・泰寿親子(週刊文春 2011年6月掲載)

競馬界の父子と言えば、武豊騎手とその父・邦彦氏(元騎手、元調教師)が有名だ。

しかし、今、調教師として武父子以上の注目を集める父子がいる。先日行なわれた第78回日本ダービーを制した池江泰寿調教師(42歳)と、その父・泰郎氏(70歳、元騎手、元調教師)だ。

泰郎氏は、史上最強馬とも言われるディープインパクトなど、数々の名馬を世に送り出した伯楽。その父をみて育った泰寿氏は「小学生の時には調教師を目指していた」と言う。

調教師になるためにはまず騎手にならなくてはいけないと思っていた泰寿少年。体が大きくなり、騎手への道を諦めた時、「調教師への道も断念せざるをえない」と思い、大粒の涙を流した。その時、アドヴァイスを与えてくれたのが父・泰郎氏だった。

「『これからは大学を出てからでも調教師になれる時代になる。色んな世界をみるのも良いことだから大学まで行きなさい』と言われました」と泰寿氏は述懐する。

これが父からの最初で最後の助言だった。泰寿氏は大学へ進み、卒業後、競馬の世界に入る。そして、03年、超難関の調教師試験を突破した。この間、父は息子の進路について、ひと言も口を挟まなかったと言う。

今年、ダービーを制したのは冒頭に記した通りだが、勝ち馬オルフェーヴルの父であるステイゴールドは、現役時代、父・泰郎氏が管理した馬。また、26日に行なわれるGⅠ・宝塚記念にもステイゴールドの仔ドリームジャーニーやトゥザグローリー(この馬の母も父・泰郎氏が育てた馬)を送り込む予定だ。

この2月一杯で調教師を引退した父は現在、アドバイザーという形で泰寿調教師をサポートしている。泰寿氏は言う。

「フランスで行なわれる凱旋門賞を勝つと、スタンド前を勝利馬の関係者だけが馬車でパレード出来るんです。その馬車に父を乗せてあげるのが、僕の夢です」